發表文章

呼び出された商人達 「蘿絲梅茵大人、手紙の内容について詳しく教えていただきたく存じます」  わたしとのやり取りは、最も親しい本諾に任されているようで、居並ぶ者を見回して一番に口を開いたのは本諾だった。  ギルド長も一緒にいることから、わたしはなるべく丁寧に説明することにする。 「貴族の子は10歳になれば、冬の間、貴族院で勉強することになります。他領の貴族の子も同じように集まってくる場所です」  貴族院の説明から始まり、領地ごとに影響力で順位が付けられていることと、これからは領主候補生が続くので、埃倫費斯特は流行を発信して、順位を上げていくように、と奧普・埃倫費斯特に命じられたことを告げる。 「貴族院を通して、埃倫費斯特から他領に広げていこうとする流行は、リンシャン、髪飾り、料理のレシピや道具、植物紙、インク、本……全てわたくしが関わった物なので、他領に広げるのはわたくしが目覚めてから、と奧普・埃倫費斯特はお考えになったようです」 「それで、今年から貴族院へと行くことになった蘿絲梅茵様が、すでに広めてきた、というわけですか……」  ベンノの言葉にわたしは「そのとおりです」と頷いた。出発前に言っておけ、とベンノの目が言っているが、そんなふうに睨まれても困る。 「わたくしも流行発信について聞いたのは、貴族院へ出発する直前でしたから、皆様に連絡が取れなかったのですけれど、文官から何か通達はなかったのでしょうか?」 「しばらくは、リンシャンや髪飾り、本を領外に出さぬように、という通達はございました。……その通達から、そのうち解禁されて、一気に広がるのではないか、と考えて、多少の準備はしてきたつもりです」 「さすがベンノ。|慧眼《けいがん》ですわね」  領外に出さぬようにという通達で、広げるための準備をするとはさすがベンノである。 「それで、流行を広げることに関して、現在はどのような状況になっているのでしょう? 蘿絲梅茵様がこちらにお戻りになっているということは、すでに広がってしまったということでしょうか?」 「まず、わたくしは最初の一年で全ての物を一気に広げるよりは、在学中に少しずつ広げていった方が良いと考えました」  流行を小出しにして、長く出し続けることで、埃倫費斯特が一発屋でないことを印象付けるためである。 「確かに
回到神殿  春の領主会議までに呼び出さなければならないとはいえ、今は冬の主の討伐さえ終わっていない吹雪が強くなっている冬の半ばだ。平民の商人を呼ぼうと思ったところで、すぐに呼べる状況ではない。 「冬の主の討伐が終わってから、奧普・埃倫費斯特の名で招待状を出すことになるので、蘿絲梅茵は前もって本諾達に知らせてやれ。何の準備もなく、というわけにはいかぬだろう?」  基貝・哈爾登采爾に呼び出された時の様子は哀れであった、と神官長が呟いた。そういえば、お母様の実家がある哈爾登采爾に工房を作るため、上級貴族に囲まれて商談するという大変な思いをしたと聞いた覚えがある。神官長から見ても、同情せざるを得ないような状況だったらしい。 「そして、ベンノと城へと上がる人数の調整をして、報告しなさい。文官にそれだけの人数を対象にした招待状を作らせる」 「瞭解了。……養父大人,吉爾貝塔商会の代表はすでに変わっているのですけれど、そちらの代表も呼んでおきましょうか?」 「あぁ、そちらとの調整は任せる。他の文官に任せるより、其方が自分で行った方が安心できるのだろう?」 「恐れ入ります」 「では、明日には神殿に戻るぞ、蘿絲梅茵。冬の主が本格的に動き始める前に調整せねばならぬからな」 「わかりました」  その日の夕食はおじい様や神官長も一緒で、領主一家の団欒という感じになった。  夏洛特に貴族院がどのようなところか聞かれたので、わたしは図書館と史瓦茲と懷斯について熱く語る。 「図書館のお手伝いをする大きな松兔の形をした魔術具ですか? それはとても可愛いでしょうね」 「えぇ。女子生徒にはとても人気があるのです。新しい主は新しい服を贈ることになっていて、皆で今考えているところなのです。男の子と女の子の格好をさせる予定なのですけれど、図書委員の腕章は絶対に付けるのですよ。わたくしもお揃いを付ける予定なのです」 「お揃いの腕章ですか? 主であるお姉様と一緒に図書館の中を歩いている姿を見たいですわ。来年が楽しみです」  夏洛特と会話が弾んだ後は、わくわくとした様子のおじい様から迪塔勝負の話を聞かれた。やはり騎士は迪塔に多大な関心があるのか、養父様の後ろに立っているお父様の目もちょっと輝いている気がする。 「蘿絲梅茵は奇策を使って敦刻爾弗格に勝利したのだろう